2008年08月26日
近江神宮 善庵
「そば」か「うどん」かと問われれば、うどん派が大多数を占めるのが、滋賀を含む西国文化。
それでも近年では、東に負けるとも劣らない「そば処」が暖簾を掲げるようになり
そば通をうならせる店も増えてきました。
そんななか、今回紹介したいのが今年4月に開店したにもかかわらず
早くもそば好きのあいだで話題になっているのが「近江神宮 善庵」です。

「宮そば・十割」と銘打つこの店は、その名の通り近江神宮の境内にあり、
打つそばも、つなぎを一切使用しない十割そば(100%そば粉のみの意)。



小麦などグルテンの力を使わず、水とそば粉のみで打つだけあって、
粉をまとめるだけでも難しく、麺状にするのも至難の業。
細く、長く切るのはさらに高度な技が必要といわれます。
その難しさを知るそば通に「奇跡」とまで言わしめるのが
この店の十割そばの細さと、透き通るような白さ。

国産のなかでも最高級といわれる会津のそば粉だけを使い、
打ちたて、ゆがきたてを楽しませてくれます。
「会津ではそばはめでたい席で振舞われる食べ物。
会津漆器の赤に映えるよう、麺も白いほどよいとされ
昔から難しいそば打ちの技術が受け継がれてきたんですよ」
とはご亭主の秋内功さん。
「会津の粉を打つ以上、
その技を受け継いできた先人たちや
最高のそばをいまも育て続ける方々に対して
恥ずかしいそばは打てません。
思いに応えるものを打たなければと
肝に銘じています」と
そばへの思いを語ってくださいました。
朝早くから額に汗してそば打つ秋内さんですが、実は最初から
そば職人をめざしていたわけではないんだとか。

14~5年前から奥様の敏美さんとともに毎年、会津を訪れ
その旅先で会津そばには出会っていましたが、
まさが自分がそのそばを打つようになるとは思ってもみなかったそうです。
きっかけとなったのは、もともと若いころから料理が好きだったところへ
農業を営んでいたお父様が亡くなり、畑が残されたことでした。
「体力があるうちに安全でうまい野菜づくりに取り組み
それを使って料理をつくってみたい」と考え、
30年務め上げた職場を早期退職したのが数年前。
同じころ、訪れた会津のなじみの宿で、そこの大奥様に地元のそば打ちの名人を紹介され、
その技と味に魅了されたのだといいます。
「正直それまでは、そばは好きなほうではありませんでした。
でもそれは、自分が美味しいと思うそばに出会っていなかっただけだったんです」。
以来、一心に技術を身に付けた秋内さんは、
奥様のご両親が営む市内の店で1日数食限定のそば膳を出すようになり
店のうわさは口コミで徐々に広まっていきました。


店が軌道に乗り始めたころ、所用で訪ねた近江神宮で
境内の空き店舗の話になったのは昨年の冬のこと。
「何かお役に立てることはないか」と思いを巡らせた秋内さんは
幼いころから近江神宮のそばで暮らし、お父様の信奉が厚かったこと、
ご自身も前職でよく同宮を訪れていたこと、
そして同じころ、滋賀を代表する料理人の方の依頼で
近江の味をとりまとめた本の編纂に携わっていたこと、など相まって
地元に役立つためのご縁かもしれない、と思い至り、
境内で店を開くことを決意したんだとか。
店の名はお父様のお名前から一字とって「善庵」に。

写真は「宮そば」2500円のコース。
盛りそばと、それよりもさらに細い「水そば」が各一椀、
そば煎餅に、そば湯が付き、そばだけをじっくり味わいたい、という人におすすめ。
昼は前日までに、夜は当日14:00までに予約が必要です。
お膳にはつゆのほか、塩が付いていて、まずはそばの香りを余すところなく楽しむために
そのまま猪口にとって何もつけずにいただきます。


最初のふわっと広がるそばの香りが、噛むほどにこうばしくなり、
やわらかな弾力のある麺はこれまで体験したことのないような食感です。

ひと通り、そばの香りを楽しんだら、次は塩で。
この店ならではの細麺に絡みやすいよう、荒挽きにしてあります。
そば独特の甘みを塩が引き出して、これまた新たな味わい!
最後のつゆも、そばの風味を消さず、
しかも豊かな香りを損なわないよう
カツオの風味をギリギリのところで
調整してあるのだとか。
季節や天候、温度、湿度によって
微妙に味を変えるそうです。

こちらが超極細の「水そば」。この麺の細さと艶、歯ごたえを
写真ではお伝えしきれないのがとっても残念!


そば煎餅ももちろん手製。超薄焼きで、パリっ軽く仕上がっているのも
細打ちの技をもつご亭主ならでは。
そして、最後まで驚かされるのが
この「そば湯」。
打ち粉にもそばを使っている
徹底ぶりのため、こちらもそば100%。
とろりとしたなめらかさで、
私はつゆを入れずに
そのまま全部いただいてしまいました。


お昼の1500円の定食は1日15~20食限定ですが、予約なしでもOK。
盛りそば一椀とそば煎餅、そば湯が付いています(写真左)。
写真右は「宮そば」3500円のコース。
盛りそばと水そば各一椀と、そばがきの焼柚子味噌、
そば粉で揚げた天ぷら、そば煎餅、そば湯付き。
お宮参りの場合は、お祝い価格で3000円のサービスもあります。

店は宮内ならではのどっしりした雰囲気。
テーブルやイスがないのは、料理がすべてお膳で供されるからで、
使われるお膳は、江戸末期からご亭主の家に伝わる黒輪島という贅沢さ。


金屏風も先祖伝来の品だそうで、この前でお祝いの記念写真を撮る人も多いとか。


神宮の深い森に囲まれ、夜はまた違った趣を見せる善庵。
そば通ならずとも、一度はゆっくり訪れてみたいお店です。

※情報は2008年8月現在。詳しくは直接お問い合わせください。
*************************************
近江神宮 善庵(ぜんあん)
★住所 大津市神宮町1-1
★電話 077―521―1207
★営業 昼11:45~14:00頃まで
夜17:30~21:30頃まで
※夜は「宮そば」3500円コース・3~12人までの予約制
★定休 月曜
★HP http://www.eonet.ne.jp/~poemu/
★地図 地図はこちら
※一部写真提供:近江神宮 善庵
それでも近年では、東に負けるとも劣らない「そば処」が暖簾を掲げるようになり
そば通をうならせる店も増えてきました。
そんななか、今回紹介したいのが今年4月に開店したにもかかわらず
早くもそば好きのあいだで話題になっているのが「近江神宮 善庵」です。

「宮そば・十割」と銘打つこの店は、その名の通り近江神宮の境内にあり、
打つそばも、つなぎを一切使用しない十割そば(100%そば粉のみの意)。



小麦などグルテンの力を使わず、水とそば粉のみで打つだけあって、
粉をまとめるだけでも難しく、麺状にするのも至難の業。
細く、長く切るのはさらに高度な技が必要といわれます。
その難しさを知るそば通に「奇跡」とまで言わしめるのが
この店の十割そばの細さと、透き通るような白さ。

国産のなかでも最高級といわれる会津のそば粉だけを使い、
打ちたて、ゆがきたてを楽しませてくれます。
「会津ではそばはめでたい席で振舞われる食べ物。
会津漆器の赤に映えるよう、麺も白いほどよいとされ
昔から難しいそば打ちの技術が受け継がれてきたんですよ」
とはご亭主の秋内功さん。

その技を受け継いできた先人たちや
最高のそばをいまも育て続ける方々に対して
恥ずかしいそばは打てません。
思いに応えるものを打たなければと
肝に銘じています」と
そばへの思いを語ってくださいました。
朝早くから額に汗してそば打つ秋内さんですが、実は最初から
そば職人をめざしていたわけではないんだとか。

14~5年前から奥様の敏美さんとともに毎年、会津を訪れ
その旅先で会津そばには出会っていましたが、
まさが自分がそのそばを打つようになるとは思ってもみなかったそうです。
きっかけとなったのは、もともと若いころから料理が好きだったところへ
農業を営んでいたお父様が亡くなり、畑が残されたことでした。
「体力があるうちに安全でうまい野菜づくりに取り組み
それを使って料理をつくってみたい」と考え、
30年務め上げた職場を早期退職したのが数年前。
同じころ、訪れた会津のなじみの宿で、そこの大奥様に地元のそば打ちの名人を紹介され、
その技と味に魅了されたのだといいます。
「正直それまでは、そばは好きなほうではありませんでした。
でもそれは、自分が美味しいと思うそばに出会っていなかっただけだったんです」。
以来、一心に技術を身に付けた秋内さんは、
奥様のご両親が営む市内の店で1日数食限定のそば膳を出すようになり
店のうわさは口コミで徐々に広まっていきました。


店が軌道に乗り始めたころ、所用で訪ねた近江神宮で
境内の空き店舗の話になったのは昨年の冬のこと。
「何かお役に立てることはないか」と思いを巡らせた秋内さんは
幼いころから近江神宮のそばで暮らし、お父様の信奉が厚かったこと、
ご自身も前職でよく同宮を訪れていたこと、
そして同じころ、滋賀を代表する料理人の方の依頼で
近江の味をとりまとめた本の編纂に携わっていたこと、など相まって
地元に役立つためのご縁かもしれない、と思い至り、
境内で店を開くことを決意したんだとか。
店の名はお父様のお名前から一字とって「善庵」に。

写真は「宮そば」2500円のコース。
盛りそばと、それよりもさらに細い「水そば」が各一椀、
そば煎餅に、そば湯が付き、そばだけをじっくり味わいたい、という人におすすめ。
昼は前日までに、夜は当日14:00までに予約が必要です。
お膳にはつゆのほか、塩が付いていて、まずはそばの香りを余すところなく楽しむために
そのまま猪口にとって何もつけずにいただきます。


最初のふわっと広がるそばの香りが、噛むほどにこうばしくなり、
やわらかな弾力のある麺はこれまで体験したことのないような食感です。

ひと通り、そばの香りを楽しんだら、次は塩で。
この店ならではの細麺に絡みやすいよう、荒挽きにしてあります。
そば独特の甘みを塩が引き出して、これまた新たな味わい!

しかも豊かな香りを損なわないよう
カツオの風味をギリギリのところで
調整してあるのだとか。
季節や天候、温度、湿度によって
微妙に味を変えるそうです。

こちらが超極細の「水そば」。この麺の細さと艶、歯ごたえを
写真ではお伝えしきれないのがとっても残念!


そば煎餅ももちろん手製。超薄焼きで、パリっ軽く仕上がっているのも
細打ちの技をもつご亭主ならでは。

この「そば湯」。
打ち粉にもそばを使っている
徹底ぶりのため、こちらもそば100%。
とろりとしたなめらかさで、
私はつゆを入れずに
そのまま全部いただいてしまいました。


お昼の1500円の定食は1日15~20食限定ですが、予約なしでもOK。
盛りそば一椀とそば煎餅、そば湯が付いています(写真左)。
写真右は「宮そば」3500円のコース。
盛りそばと水そば各一椀と、そばがきの焼柚子味噌、
そば粉で揚げた天ぷら、そば煎餅、そば湯付き。
お宮参りの場合は、お祝い価格で3000円のサービスもあります。

店は宮内ならではのどっしりした雰囲気。
テーブルやイスがないのは、料理がすべてお膳で供されるからで、
使われるお膳は、江戸末期からご亭主の家に伝わる黒輪島という贅沢さ。


金屏風も先祖伝来の品だそうで、この前でお祝いの記念写真を撮る人も多いとか。


神宮の深い森に囲まれ、夜はまた違った趣を見せる善庵。
そば通ならずとも、一度はゆっくり訪れてみたいお店です。

※情報は2008年8月現在。詳しくは直接お問い合わせください。
*************************************
近江神宮 善庵(ぜんあん)
★住所 大津市神宮町1-1
★電話 077―521―1207
★営業 昼11:45~14:00頃まで
夜17:30~21:30頃まで
※夜は「宮そば」3500円コース・3~12人までの予約制
★定休 月曜
★HP http://www.eonet.ne.jp/~poemu/
★地図 地図はこちら
※一部写真提供:近江神宮 善庵
Posted by しがまにあスタッフ at 20:00
│大津・膳所